【読書ノート】科学の発見

 著者: 竹澤

書籍情報

スティーヴン・ワインバーグ著 赤根洋子訳

出版:2016/5/10

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感想

「本書は不遜な歴史書だ!」「ギリシャの『科学』はポエムに過ぎない」などこの手の本に似つかわしくないセンセーショナルな帯の踊る本書だが、その中身も帯の通り過激だ。なにせ、このでは現代の知識から過去の偉人を裁くというある種歴史を学ぶ者にとってのタブーに堂々と切り込んでいるからである。

著者のスティーヴン・ワインバーグはノーベル賞物理学者であり、間違いなくこの先科学史の一部として綴られていくであろう人物である。彼の功績は「ワインバーグ=サラム理論」、すなわち素粒子理論の礎となったような現代の先端科学切り開いた理論である。そんな科学者が、テキサス大学で学部生向けに行っていた教養講座のノートを書籍として再編したのが本書である。

本書では古代ギリシャから始まり、ニュートンに至るまでの科学史を俯瞰している。タレス、ピタゴラス、そしてアリストテレスといったギリシアの知識人によって紡がれた初期の『科学』。アリスタルコス、プトレマイオスといった人物によって完成されたギリシア天文学。中世の間、アラビア世界で花開いたギリシア哲学の再発見。そして、コペルニクスにはじまりニュートンに終わる17世紀科学革命まで。おおよそ我々が今日「科学」と呼ぶ概念が成立するまでの歴史を眺めているのである。

又この本では、その時代に議論された内容について書籍末に記載されたテクニカルノートで数学的・科学的な検証を実施している。この項は正しく本職の科学者としての面目躍如といったところで、高校レベルの知識があれば理解できるように丁寧な解説が書かれているのが特徴である。

冒頭にも述べたが、この本はある種歴史学のタブーへ堂々と踏み込んでいる。しかしながら、多くの歴史書がするような遥か過去に立って話を始めるのではなく、あくまでも現代の科学という視点から動かずに過去を論じる本書の構成は、歴史を学び慣れていない人間にって親しみやすい内容であるとも言えるのではないだろうか?そういった観点からも本書は、高校で軽く世界史へ触れた程度の理系の人々にこそおすすめしたい。理系教育を受けてきた人間が、「科学の歴史」を俯瞰する最初の一冊目として本書は最も最適であろう。この本で17世紀科学革命や、ギリシャ哲学に興味を持ったのであれば、ぜひ科学史をもっと詳しく知ってほしい。