【読書ノート】 ガリレオ書簡集

 著者: 竹澤

書籍情報

イタリアルネサンス文学・哲学コレクション(5)

ガリレオ書簡集 天文学的発見から聖書解釈まで

ガリレオ・ガリレイ 小林満 訳

出版:2022/12/10

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感想

「イタリアルネサンス文学・哲学コレクション」という一連のシリーズ企画で書かれたこの書籍は、ガリレオがケプラーの『宇宙の神秘』にむけて送った書簡から、『クリスティーナ大公母への手紙』までの22本の書簡を邦訳で掲載している。

内容ははっきり言って完全にマニア・オタク向けの内容だが、前提知識があればこれほど刺激的な書籍もなかなかない。この本では、基本的に細かい説明なしにとりあえずそれぞれの書簡を提示し、本の後ろの方で註をつけるスタイルをとっているため、全くガリレオを知らない人間が読めば、ほとんどチンプンカンプンの内容だろう。

だがしかし、ガリレオについて書かれた本や、科学革命に関する書籍・議論を見聞きしたことのあり、なおかつ原文を読めない類の専門家外の私のような人間にとって、この書籍はいわば今まで断片的に引用される形でしか知りえなかった、ガリレオの書簡を垣間見れる最高のファンアイテムである。

この時代、論文と書簡の間の線引きは曖昧だった。著名人による手紙はしばしば写本されて知識人たちの間で回し読みされ、一種の科学論文的な扱いをされることもあったのである。ガリレオの書いた書簡のなかでは、ケプラーにむけて送ったほとんど社交辞令のような手紙から、ベネデット・カステッリヘへの書簡のように彼の科学や宗教に対する哲学がふんだんに盛り込まれたものまで幅広い内容を備えている。特に、この本の最後に記されている『クリスティーナ大公母への書簡』はガリレオがやがて宗教裁判で裁かれていく原因にもなった、ガリレオの宗教的観念や科学に対する思いがまとめられており、それ自体がガリレオ・ガリレイという男の生きた時代と哲学をある種彼のどの著作よりも煮詰めた内容になっている。

ガリレオ・ガリレイは一応の貴族生まれであり、数学者・天文学者であると同時にルネサンス期の文学に親しんだ作家でもあった。この本の中でも指摘されているが、ガリレオの著作の中には『狂えるオルランド』等の同時代に描かれた作品からの影響が垣間見える。これは彼が優れた数学者・天文学者であったと同時に、ルネサンスの時代を生きる文化人でもあった一面だろう。

又、ガリレオ自身優れた文筆家であった点も改めて意識されるべきである。彼が科学史にこれほどまでに大きな影響を残したのは、その優れた発見と考察が、明快な文章で提示されていたことも無視できない。事実ガリレオの著作は後の時代の詩人たちにも影響を与えており、その功績が今回『イタリアルネサンス文学・哲学コレクション』という枠組みに組み入れられた理由であろう。

総じて、非常にニッチな内容の書籍だが、科学革命のオタクには自信をもってお勧めできる。オタクは全員買え